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立ち上げの記録が作者の意図に反して大変好評で、ぜひ続編を書いてほしいという要望をたくさんいただいた(嘘です)。そこで、続編としてオーバーフローへのステップアップの記録を書くことにした。
立ち上げのところでちらっと書いたけど、水槽を立ち上げるときは、水槽用クーラーなんて高価な装置を付けるつもりはなく60cm オーバーフロー無しの水槽を選択した。90cm水槽にアップグレードしたいとは思っていたので、オーバーフローはそのときでよく、60cm水槽は助走段階としてクーラー無しで維持できそうな海水魚とソフトコーラルをメインにした水槽にしようと考えた。カクレクマノミと言えばイソギンチャクだが、イソギンチャクも初心者には飼育が難しく体調を崩すと溶けて水槽全体が恐ろしいことになるという他のアクアリストの経験談を読むとイソギンチャクを飼うのも避けようと思っていた。しかし、実際に海水魚を始めてみると、こうした考えが実に甘く、かつ、自分の性格をまったく自覚していないことがわかった。だって、yuichanはぼくのそうした当初の考えはお構いなしで、カクレクマノミにはイソギンチャクがなければならないと主張するし、ぼくもそう言われればカクレクマノミがイソギンチャクに入っている姿を見たい。イソギンチャクを飼うには水温維持が絶対で適当ではいけない。そこで最初の考えはあっさりと撤回し、まずは水槽用クーラーの設置を決めたのだ。
 水槽用クーラ: ゼンスイ ZC-500
水槽用クーラーを設置するだって?どうやって?
水槽用クーラーって水温をコントロールするだけの装置で、そのためには水槽の水を水槽とクーラーの間で循環させてやらなければならない。水を循環させる機能はクーラー自体にはない。そう、クーラーだけ買っても使えないんだって。水を循環させるには悩むまでもなく、別にポンプが必要ってことですな。オーバーフローではない単一の水槽の水を外に出して戻してやるなんて、そんな難しい問題を初心者に出されても大変困る。そもそもポンプってどこにどう設置すれば水が循環するのかわからない。それでゼンスイやレイシーなどのメーカーサイトの設置例などを見て考え込んでしまったわけ。設置方法がわからないから、なにが必要なのか見当がつかない。
クーラ用のポンプとして使えそうなポンプは水中ポンプとマグネットポンプがある。水中ポンプはその名の通り水中にドボンと入れちゃえば水を吸い出してくれる。マグネットポンプは陸上で使うので水槽とポンプを繋ぐ配管が必要。でも、耐久性ということではマグネットポンプのほうがいいらしい。水中ポンプをドボンといっても、まさか海水魚やサンゴがいる水槽にドボンってわけにはいかない。水中ポンプってパワーヘッドとは比べ物にならないくらい大きくて20cmくらいあるんだ。ってことは、マグネットポンプで水を吸い取ってクーラーを通して戻すか?マグネットポンプとクーラーをキャビネット内に入れるとすると、2mくらいの高低差があるところから、水をウィ〜〜ンって吸い込んで、おー、やっときたかと思ったら、クーラーによろしく〜って、それを今度はググググって、また2mの高さを上げてやる。そんなことできるのか?この吸い込み面の高さと吐き出し面の高さの違いを揚程と言ってポンプの仕様にあるので、まあ、無理なことではない。でも、なんか効率悪いような気がする。ポンプの身になって考えれば、水を上げたいのか、下げたいのははっきりしろって言いたくなる。よく考えれば、水をキャビネットの下に導いて、そして水槽に戻す、これってオーバーフローでやってることでしょ。それを無理やりポンプ1台でやろうとするから効率悪く思えるのだ。地球の重力ってものがあるんだから、上から下に水を落とすのにポンプ君ががんばる必要はまったくないのだ。なんてぼくは馬鹿だったんだろう。オーバーフローにすれば簡単な話じゃないか。
 ウェイブ クリエーション: サイホンボックス 右に映っている透明チューブは自動給水用のタンクからサンプに繋がっている。
話はどんどん拡大していくが、オーバーフローするにはどうすればいいか。どうやって?
オーバーフロー水槽でない水槽をオーバーフローにするには、底に穴を開けてオーバーフロー管を突っ込んでオーバーフロー水槽を自作してしまうという方法もあるが全面ガラス水槽の加工は素人では無理。できたとしても、すでに立ち上がった水槽をリセットする気はない。そうなると方法は1つだけ、サイホンボックスを使う。サイホンボックスを使う多くのアクアリストは自作しているようだが、ぼくは自作しない(自信を持って明言する)。市販されているサイホンボックスはそれほど多くはない。サイホンボックスの欠点は起動時にパイプ内のエアを抜かなければサイホンの原理が作動しないこと。たとえば、留守中に停電でポンプが停止し、復旧後ポンプが再起動したときにエアが自動的に抜けなければオーバーフローしない。オーバーフローしないでポンプだけが水を水槽に戻したらどうなるでしょう?これは初心者にも簡単に想像できる。サンプの水がなくなるまで水を上げ続け、水槽の水は溢れ、ポンプは空回りし爆発、家は炎上し家族は橋の下で川の魚を鑑賞しながら生活することになる。おー、想像しただけでも恐ろしい、サイホンボックスは慎重に選ぼう。
エア抜き専用のパワーヘッドを付けるなんて製品もあるが、万が一のために専用パワーヘッドを回し続けるってのも効率悪いでしょ。そこで、ポンプからの戻りの水流を使ってエア抜きする吸い出しと吐き出しがセットになったサイホンボックスがいくつかある。そのなかで、安くて埼玉に会社があるウェーブクリエーションのサイホンボックスに決定した。ウェーブクリエーションはアクリルの水槽や濾過槽を製造販売しており、サンプも一緒に注文しようかかなり迷った。でも、やっぱりアクリル製品は高い。アクリル自体が高いのだから仕方ないが、たかがサンプにお金を使う気にはなれなかった。だって、キャビネットの中に入れて、だれも見てくれないんだよ。水槽より高いサンプを買うなんてないよなー。サンプはティアラで特価の60cm規格水槽を見つけて購入した。
だんだん決まってきたよ。これでやっとポンプとクーラーの検討に戻れる。サイホンボックスとサンプが決まり、ぼくの頭のなかでは水槽の水はもうキャビネット内のサンプまで落ちてきている。あとはポンプを使ってサンプの水をクーラー経由で水槽に戻してやるだけ。ポンプ君はずいぶん肩の荷がおりてほっとしているに違いない。
クーラー選択の方法は、まず水量と器材の熱源から冷却熱量を算出する。クーラーの選択は水量ではなく熱量なのだ。計算式は次のような感じ。
冷却熱量(Kcal/h)=((全水量×温度差)/24時間+(熱源×0.86))×1.3
熱源は、循環ポンプ、照明、パワーヘッド、殺菌灯など、水温に影響を与えるすべての器材の出力ワット数を合計する。
これに従って、現在使っている器材と近い将来追加したいメタハラや殺菌灯の熱源を集計し熱量を算出すると、500L対応として販売されているクーラーが必要ということになった。ウソ、クーラーってすごく高いんだよ、わかってる?たしかにみなさん水量に関係なく大きなクーラーを使ってる。それとクーラーについての情報として最も多かったのはうるさいということ。うちの場合はリビングだしうるさいのは困る。そういうことで、最終的にゼンスイのZC-500に決めた。お金のことは、もうどうでもいい、ボーナス好きなだけ持っていけ!(もう考えるのが面倒になってきている)ZC-500をナチュラルで購入。
あとはポンプだけだね。ZC-500には15〜40L/minの流量が必要。サイホンボックスのエア抜きの機能には9L/min、揚程1.2mのポンプが必要。ZC-500の流量条件を満たせばサイホンボックスの流量は十分だろう。さて、水中ポンプにするか、マグネットポンプにするか迷ったが水中ポンプにした。理由は水中ポンプはサンプに沈めればいいだけなので配管が単純になることと、水中なので音が漏れず静からしい。水中ポンプのなかでは静かで信頼性が高いという評判のREI-SEA RSD-40を選んだ。当時発売されたばかりのオーシャンランナーと迷ったが、実績があるREI-SEAのほうを取った。REI-SEAの水中ポンプには10、20、40と3種類の流量があり、ZC-500の要件だけを考えればRSD-20でもよかったのだが、揚程と疲弊を考慮して大きめのRSD-40にし、流量は配管をバイパスしボールバルブで調整できるようにする。ボールバルブというのは水道の蛇口みたいなもので塩ビパイプの流量を調整できるパーツ。塩ビパイプの配管方法は研究して結構詳しくなっている。
 塩ビ配管。白っぽい洗濯機の排水ホースみたいなのがオーバーフロー用でサンプのなかに入っている。緑のホースは殺菌灯に繋がる。
これで必要な器材はすべて揃ったので後は設置して配管するだけ。配管は塩ビパイプとホースで接続すればいい。ここで工夫が必要なところがいくつかある。サンプの60cm規格水槽はキャビネットのなかにおき、サイホンボックスはもちろんキャビネットの上の水槽にかける。キャビネットはオーバーフロー対応で上面左右奥に穴があるので、サイホンボックスのオーバーフロー管 VP40(直径40mmの塩ビ管のこと)はこの穴を通す。VP40はフレキシブルホース(洗濯機の排水ホースみたいなもの)に繋がっているので、そのままサンプ内に沈めればいい。サンプには水中ポンプを沈めて水をクーラーに送るのだが、さてここで問題が。水槽はリビングの狭いスペースに置いているので、クーラーはキャビネットのなかに収めるつもりでいた。熱効率をよくするにはクーラーはキャビネットのなかに入れないほうがいいらしいがインテリア性を重視したらキャビネットの中だ。そのためクーラーも小型のものを選び、サイズ的にはキャビネットに入るはずだった。しかし、入らない。キャビネットの中の補強版みたいなでっぱりが邪魔でサンプとクーラーを両方収めることは不可能だったのだ。クーラーはキャビネットの横に置くしかない。そうなると、サンプからポンプで吸い上げた水をキャビネットの外に導かなければならないのだが、塩ビ管を通せるのはオーバーフロー用の穴しかない。キャビネットは後ろが15cmほどの隙間があいており、本来はそこを通したいのだが、キャビネットを後ろの壁にぴったりつけて置いたため今となってはなにも通せない。効率は悪いがポンプからキャビネット上面の穴を通してクーラーに入り、クーラーから出た水はサイホンボックスの吐き出し用のパイプ VP13(直径13mmの塩ビ管)に戻ることになる。つまり、サンプからの配管はキャビネットをまたいでクーラーに繋がるので、ホースだけの配管では折れてしまうため塩ビ管を使ったほうがいい。
塩ビ管ってだれでも見たことはあるだろうけど、加工したことのある人なんていないでしょう。ぼくも同じくで、まったくわからなかった。でも、ホームセンターの塩ビ売り場に行けばすぐに納得する。いろんな部品があるので、それを組み合わせて好きなように配管を作っていけばいい。加工といってもパイプを切って専用の接着剤で繋ぐだけ。プラモデルを作るようなもので結構楽しめる。パイプを切る方法は、塩ビカッターという商品があるので、それを使えば簡単に切れちゃう。カッターは5000円ほどの高いものから2000円弱の安いものまで種類がある。ぼくは2件目のホームセンターで2000円弱の安いカッターを見つけたのでそれを使った。水槽の配管に使うくらいならば安いもので十分。
今回の配管に必要な要件は、ポンプからの水量を分岐して水量を調節できるようにし、キャビネットの上の穴を通ってまたげばいいだけなので単純なものだ。材料を揃えて、切って、接着していけば30分ほどでできてしまった。なーんだ、簡単だ。配管のことがよくわからず、オーバーフローやマグネットポンプを諦めたけど、こんなことなら最初からやってみればよかった。
 サンプ回りはこんな感じになった。整理整頓が苦手なためかなりぐちゃぐちゃ。左の黒い筒は殺菌灯。水槽右にかけているのがプロテインスキマー プリズム。無造作に水槽の上に斜めに置かれている塩ビパイプは吸着剤を入れるバッグを吊るすため。
すべての器材を配管に接続し、初めてポンプの電源を入れるときは緊張したなー。配管は水漏れせずに水は流れるか、サイホンボックスはうまく動くのか、ドキドキ。思い通りに水が流れたときは結構感動ものだった。
こうしてオーバーフローへのステップアップはうまくいった。結論としていくつか反省点がある。
キャビネットは後のメンテナンスや配管のことを考慮してスペースに余裕を持って置くこと。せめてVP16が通るように2cm程度は余裕がほしい。サイホンボックスのメーカーサイトには、「吐出水量とフロー水量の調整が簡単に水量の調整もワンタッチで作動中でもできる」とあり、これはオーバーフロー管を上下に移動させて調節するのだが、調節のためナットを緩めると水が漏れてくる。これじゃ、作動中の調整はできないよ。水漏れしてもいいぞって覚悟があればできるけど、そんなばかな。まあ、1回設置してしまえば作動中に水量を調整することなんてないからいいけどね。ここで言う水量って水槽の水位のことで、これが一番上にしても水位が低くてかっこ悪い。そこで、フロー管の上にさらに5cmほどの塩ビを繋いで水位をあげている。どちらにしても、オーバーフローするならサイホンボックスではなく、オーバーフロー水槽を使ったほうがいい。水中ポンプは水中に沈めるから吸い込み口のスポンジにごみがたまり、少し使うと性能が落ちる。定期的に掃除すればいい話なんだけど、このでかいポンプの配管をはずして掃除するのは一苦労。面倒なのでポンプはマグネットでサンプの外に置いたほうがよかった。外に置くと音の心配はあるが、そのうちマグネットポンプに変更してみよう。
− 完 −
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